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東京高等裁判所 昭和27年(ラ)282号 決定

(一)  金額九十万円、満期昭和二十六年八月二十一日、支払地、振出地各東京都千代田区、支払場所株式会社三和銀行室町支店、振出日同年六月十一日、振出人株式会社旺詢社及び抗告人吉田正、受取人日進織物工業株式会社なる約束手形一通。

(二)  金額百万円、満期同年八月二十五日、振出日同年六月十六日、その他の要件は(一)の手形と同一なる約束手形一通。

(三)  金額百十万円、満期同年八月二十八日、振出日同年六月八日、その他の要件は(一)の手形と同一なる約束手形一通。

を日進織物工業株式会社より白地式裏書によつて譲渡を受け、その所持人となつたので、右各手形の満期に、その支払場所たる三和銀行室町支店において呈示して、支払を求めたが、いずれも取引停止解約の理由によつて、同銀行から、その支払を拒絶せられた、その後同年十月中右手形に対し、右株式会社旺詢社及び日進織物工業株式会社より現金及び衣料品をもつて合計金百七十万円相当の金額の弁済があつたので、相手方はこれを右(一)の手形金及び(二)の手形金の一部の支払に充当したから、右(一)の手形債権は消滅したが、なお抗告人に対し(二)の手形金の残金二十万円、(三)の手形金百拾万円合計金百三十万円の手形債権を有したところ、抗告人は同年八月二十一日右(一)の手形金の支払を拒絶することによつて、支払を停止したから、本件破産申立をしたというのであるか、抗告人は相手方主張の右(二)(三)の手形残債務の存したことは認めるけれども、その後右債務に対し金十万円の内入弁済をなし、その残債務額が金百二十万円となつたところ、昭和二十八年八月中抗告人、相手方及び大山隆業の三者間において和解契約をなし大山隆業は相手方に対し、抗告人の右(二)(三)の手形金の残金百二十万円及びその法定利息債務について免責的債務引受けをなし抗告人は相手方から右手形債務の免除を受けたから、これによつて相手方の本件破産申立債権は消滅に帰した。しかも破産決定後現在に至るまで事件破産申立債権を除き、他に何ら破産債権の届出がないのであるから、原決定を取消し、相手方の破産申立を却下する旨の裁判を求める、というにあつて、疎明として乙第一ないし第六号証を提出した。

よつて按ずるに、本件破産申立債権である相手方の抗告人に対する約束手形金の残金百三十万円の債権が昭和二十六年十月当時存したことは、抗告人の認めるところであるが、その後昭和二十七年八月下旬右手形債務につき、裏書人日進織物工業株式会社が金十万円を弁済したことは本件記録編綴の相手方代理人伊藤利夫提出の回答書(記録第一五丁)によつて認められるから、抗告人の右手形債務は金百二十万円となつたことが明らかである。しかも疎乙第五号証(和解契約書)、同第六号証(証明書)によれば、昭和二十八年八月中抗告人、相手方及び大山隆業の三者間において抗告人主張のような和解契約が成立し、抗告人は相手方から右手形債務の免除を受けたこと及び、相手方の本件破産申立債権を除き、他に破産債権の届出がないことが疎明せられる。そして破産の宣告があつても、その決定確定前に破産申立人の債権が消滅し、他に破産債権の届出がないときはその破産申立を却下すべきものと解するを相当とする(昭和九年九月二十五日大審院決定参照)から右抗告理由は正当であるといわなければならない。

よつて原決定を取消し、相手方の本件破産申立を却下すべく、ただ本件破産申立に関する費用については、全部抗告人をしてこれを負担せしめるのを相当と認め、民事訴訟法第九十六条、第八十九条、第九十条を準用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 斎藤直一 菅野次郎 坂本謁夫)

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